年間流通量の限られた神戸高見牛を、さらに時間にゆだねる
wine & steak PUCNA HICONAが扱う主役の肉は、市場に出回る量がごくわずかな神戸高見牛。この銘柄を仕入れた段階では終わらず、長期熟成の工程を経ることで旨みの層が厚みを増していく。熟成が進むにつれ肉の色合いや香りは変化し、焼き上がったときの風味は通常の牛肉とはまるで別物になる。素材の入手だけでも難しいところに、さらに時間という手間を重ねている点が、この店のステーキの骨格を形づくっている。
個人的には、熟成によって変わる肉の表情――見た目の深い赤みや、切り口から立ちのぼる独特の芳香――が印象的だった。焼く前の段階でもう「ただのステーキではない」と感じさせる存在感がある。カウンター越しに調理を眺めながら、素材が仕上がっていく過程を目の当たりにできるのも、8席だからこそ成り立つ距離感だろう。ここでは料理が出てくるまでの時間すら、食事の一部になっている。
グラスワイン20種超、ソムリエの手が動く夜
フランス産を中心に、世界各地のワインが常時20種以上グラスで注がれている。ボトルで頼む必要がないから、1杯ごとに産地や品種を変えて試せる自由度の高さがある。ソムリエが在籍しており、料理との相性はもちろん、その日の気分や好みの方向性を伝えるだけで銘柄を絞り込んでくれる。ワインリストの構成自体がソムリエの視点で編集されているため、並びを眺めるだけでも産地巡りをしているような感覚になる。
「難しいことは抜きで楽しんでほしい」というスタンスが店全体に浸透していて、ワインに詳しくなくても気後れしない空気がある。実際、初めてワインを頼むという客にもソムリエが一杯目を提案する場面は日常的らしい。普段ビールしか飲まない人が、ここで好みの品種を見つけて帰るという話も珍しくないという。格式ばった雰囲気とは無縁の、ゆるやかな導線が用意されている。
那覇・泉崎、カウンター8席だけの夜
旭橋駅から徒歩約3分。那覇の泉崎エリアにあるこの店は、カウンター8席のみで構成されている。全席禁煙で、各種クレジットカードや電子マネーにも対応。18歳未満の入店は受けておらず、大人だけの時間を前提にした空間設計になっている。
月曜日にはランチ営業も行っており、夜とはまた違うテンションで訪れる客もいるようだ。仕事帰りの一人利用から記念日のディナーまで、目的を限定しない懐の広さがある。席数が少ないぶん予約の確保は早めに動いたほうがよさそうで、週末は特に埋まりやすいという声が目立つ。
熟成肉とワイン、どちらも主役として並び立つ構成
wine & steak PUCNA HICONAの根底にあるのは、ステーキとワインのどちらか一方を引き立て役にしないという考え方だ。熟成肉が持つ複雑な旨みに対して、ソムリエがその場で最適な一杯を合わせることで、食事全体がひとつの流れとしてつながっていく。ペアリングという言葉を使うと堅く聞こえるが、実際にはカウンター越しの会話の中で自然に組み立てられる。料理とグラスが交互に進むうちに、気づけば予定より長く席にいたという体験をする人も多いらしい。
たとえば、熟成の効いたサーロインに南仏のシラーを合わせた瞬間、肉の脂の甘みとワインのスパイス感が噛み合って口の中で別の味が立ち上がる――そんな場面がこの店では日常的に起きている。一人で静かにグラスを傾ける夜にも、誰かとテーブルを囲む夜にも、それぞれの温度で機能する場所だ。那覇の繁華街からわずかに外れた立地もあって、店を出たあとの余韻がやけに長く残る。


